
Shalamar / I Owe You One
煌めくSolarサウンドが弾ける、幸福感に満ちた極上Disco。1979年というDiscoカルチャーの熱気がピークへ向かっていた時代、Solarレーベルから次々と生まれていた洗練されたブラック・ミュージックの中でも、Shalamar / I Owe You One はひときわ爽やかな輝きを放っていた1曲です。Shalamarといえば、多くのリスナーにとっては1982年の大名曲 A Night To Remember のイメージが強いかもしれませんね〜しかし、その完成形へ辿り着く以前の彼らには、若さと勢い、そして純粋なダンスフロアの高揚感が詰まった素晴らしい作品群が存在していました。今回レコメンドするこの I Owe You One は、まさにその代表格と言えるナンバーです。
Leon Sylversが作り上げた煌めくSolarサウンド
プロデュースを手掛けるのはSolarサウンドの立役者Leon Sylvers…The WhispersやDynasty、Carrie Lucasなどを手掛けた彼らしい、タイトで洗練されたアレンジが全編に渡って冴え渡っています。イントロから軽快に刻まれるギターカッティング、その背後で華やかに広がるホーンセクション、そして艶やかなストリングス…次々と音が重なっていくにもかかわらず、決して重たくならず、サウンド全体には心地良い風が吹き抜けているような爽快感があります。そしてリズムは軽やかなのに、低域はしっかり太い。この「抜けの良さ」と「黒さ」の絶妙なバランス感覚こそ、Solarレーベル黄金期の魅力ですね。Discoの華やかさとFunkの腰の強さ、その両方を高いレベルで成立させているからこそ、40年以上が経過した現在でも古さをカンジさせないのでしょう。
ダンサーから生まれたShalamarならではの躍動感っ!
さらに素晴らしいのがヴォーカルワークです。ShalamarはSoul Trainとの深い関わりから生まれ、のちにダンサー出身のメンバーも加わったグループという背景もあり、踊るための音楽としての感覚が非常に鋭いっ!男女混成ヴォーカルがリズムの上を軽やかに滑り、それぞれの声が掛け合うように展開しながら、フックへ向かって一気に多幸感を爆発させる流れは本当に見事です。ヴォーカルだけを前面へ押し出すのではなく、ギター、ホーン、ストリングス、リズムと一緒になってひとつの大きなグルーヴを作り上げている。この曲を聴いていると、Shalamarにとって歌うコトと踊るコトは別々のものではなく、最初からひとつの表現として存在していたのだろうなと思わせてくれますね。
サビで一気に視界が開ける多幸感
特にサビで一気に視界が開けるような高揚感は格別ですね〜それまで軽快に進んできたグルーヴの上にヴォーカルとコーラスが大きく広がり、フロア全体がパッと明るくなるような感覚がある。とはいえ、強烈なビートやハデなブレイクで無理矢理ピークへ持っていくタイプの曲ではありません。クラブのピークタイムというよりは、まだフロアに少し余白があり、人が集まり始め、少しずつ温度が生まれてくる時間帯にジワジワ効いてくるタイプのDiscoでしょうね。聴いているうちに自然と身体が動き、気がつけば気分まで明るくなっている…そんな押し付けがましくナイ多幸感こそ、この I Owe You One の大きな魅力です。
ポジティブなメッセージと人懐っこい温かさ
リリックの内容も非常にポジティブで、「君への想いに感謝している」という誠実でストレートなメッセージが込められています。この前向きなコトバと、華やかで軽快なサウンドとの相性が実にイイんですよね。Discoというと豪華なストリングスや煌びやかな衣装、派手なダンスフロアといったイメージが先行しがちですが、この曲にはそうした華やかさだけではなく、ドコか人懐っこい温かさがある。聴く人を圧倒するのではなく、自然にフロアへ誘い出してくれるような親しみやすさがあります。こうしたポップなメロディとSoul Musicとしての温度感が同居しているトコロも、Shalamar初期作品の魅力でしょう。
12インチでこそ味わいたい音の広がり
そして12インチで聴くこの曲は、やはり格別です。広がりのあるホーン、艶やかなコーラス、キレの良いギター、厚みのあるベースライン…それぞれの音が空間の中でしっかり躍動していて、アナログならではの空気感が存分に味わえます。特に少し音量を上げて聴くと、軽快な印象の裏側でベースとキックが想像以上にしっかりとグルーヴを支えているコトに気づくハズです。華やかな高域と太い低域が共存するSolarサウンドは、こうして12インチで鳴らしてみると、そのバランスの良さがさらに際立ってくる。単に曲を聴くというだけではなく、楽器ひとつひとつの配置や音の広がりまで含めて楽しめるのも、12インチシングルならではでしょうね。
A Night To Rememberだけでは勿体ないっ!
A Night To Remember だけでShalamarを止めてしまうには、あまりにも勿体ないっ! Take That To The Bank、Right In The Socket、そしてこの I Owe You One には、後に完成されていくShalamarとはまた違った、Solar Discoの瑞々しい魅力が凝縮されています。若さと勢いがありながら、Leon Sylversによるプロダクションはすでに驚くホド洗練されている。この両方が同居しているからこそ、初期Shalamarには独特の輝きがあるのでしょう。針を落とせば、1979年のダンスフロアの光景がふっと蘇るような1枚…華やかなのに嫌味がなく、軽快なのに芯がある。だからこそ今聴いても古びないんですね。この時代のSolarサウンドを深掘りしたいなら、まず最初に手にしてほしい極上の12インチです。


